私の仕事は歯科医ですが、時々同級生や同級生のご家族も来てくれます。私の年齢は四捨五入して40歳になります。自分では若いと思っていますが、同級生の歯が悪くなっていったり、髪の毛が薄くなっていったりするのを見ていると、年齢を意識してしまいます。
先日も、同級生の歯 (第一大臼歯)を残念ながら抜歯することになりました。他の歯はほとんど悪くないのに、抜歯になった左下の第―大臼歯だけ何回も治療したにもかかわらず悪くなってしまったと言います。
彼は性格的にもまじめで、一生懸命歯医者さんに通ったにもかかわらず、5〜6回詰めたり、かぶせたりをやり直ししてとうとう抜歯にになりました。本来なら、あと50年は使いたい歯です。以前治療してくれた歯医者さんもきちんと治療してくれていた歯にもかかわらず。
私たちの仕事は、むし歯を削って詰めたり、かぶせたり、抜歯したりといったことが大半を占めます。
抜歯になった原因を考えると、行き着く先はどうしても最初に第―大臼歯を治療したことにさかのぼります。
この第―大臼歯は、人間の歯の中で―番大切な歯、咬む力の中心となる歯です。それにもかかわらず、一番むし歯になりやすく、6歳の頃に萌出するので6歳臼歯ともよばれています。
小学1年生のころ生え始めますが、小学6年生になると平均で4本ある内の3本はむし歯になって削って詰められてしまいます。
あなたのお口の前から数えて6番目の歯 、―番大きな歯ですが
、ごらんになってみてください。きっと何かの詰め物がされているか、かぶせ物をしているはずです。もしかしたらもうすでに抜歯されていてブリッジになっているかもしれません。
残念ながら私の第―大臼歯も4本とも全滅です。悲しいかな大きな詰め物がされています。どうしてこのような結果になったのでしょうか。その―番大きな原因は私は歯科検診にあると考えています。

1歳6ヶ月からはじまって、3歳・保育園・小学校・中学校・高校と20歳になるまでにいったい私たちは何回の歯科検診を受けるのでしょうか。その都度厳しい検査の目によって治療しなくてもいいような小さいむし歯も、むし歯の記号のついた紙をもらって歯医者さんに行くように勧められます。紙を提出しなかったら宿題を忘れたかのような気分になります。
そして丁寧に治療していただいた結栗、歯に金属やプラスチックの詰め物がされていきます。その詰め物ほ永久的な物ではなくて、平均して10年未満でやり直しを余儀なくされ、その都度歯は大きく削られて、神経を取られ抜歯へと近づいていきます。
歯の検診には、むし歯を予防するという概念はなくて、むし歯を見つけては詰めていくという、いわば患者さんの為というよりは、歯科医が収入を得るための検診のような気がしてなりません。
左下の第―大臼歯が抜歯になった彼の場合も、歯の神経に達するむし歯が他になかったことを考えると、最初に第―大臼歯を冶療したのが―番大きな原因だったと考えられます。
歯医者になって思うのですが、日本人の歯はどう考えても削られすぎています。皆さんも歯医者さんへ行って歯を削られなかったことはないと思います。
8020運動といって80歳で20本の歯を残しましょうという運動をやっていますが、私は削られすぎている歯を改善しない限りはこの数字は到底不可能だと思っています。現往の日本人は80歳で7本しか残っていません。
髪の毛なら、痛くも痒くもなく目然に抜けていきお金もかかりませんが、歯は失う過程で、腫れたり、病んだりしてお金と時間を使い、苦痛を味わいながら抜歯になっていきます。
医療保険制度も、歯を削ったり、かぶせたりすることに多くの報酬が支払われます。ですから、歯医者も収入を得るためには歯を削る必要があるのです。歯科大学教育も、むし歯は削って詰めるものと習いましたし、現在もそう教えています。このあたりから変えていかないとなかなか8020は難しいと思います。
また、別の同級生ですが今度6本インプラント治療をすることになりました。1本が平均で30万しますから、約高級車1台分の出費です。それでも、同級生にはまだ義歯をいれたくないし、彼にもおいしく食べていただきたいと思っています。彼もまじめな性格で、小さい頃からずっと歯医者へかかり続けて、そして今回も多額の出費となりました。
いったい今までいくら歯科治療にお金を費やして来たことでしょうか。私たちが行っている治療の大半は、むし歯治療のやり直しです。ほんの少しだけ
予防歯科の知識と実践があれば不必要なことと感じています。もしあなたのお子さんが20歳までむし歯なしでいられたら、20〜50歳まではあまりむし歯にもなりません。歯医者にいくことも少なくてすむはずです。
今度も医療保険の改正がありますが、これから先、医療費は上がることはあっても下がることはありません。親からいただいた健康な歯を一番安くて、痛くなく、きれいないい方法だと思います。 |